待合室にて
待合室で調停員さんが私を呼びに来るのを待つ間、弁護士さんと色々な話をした。
離婚そのものを迷っている事。
子ども達がパパを好きな事。
やりきれない私の胸の内。
一つ一つの話を弁護士さんは静かに聞いた後
冷静に答えてくれた。
「離婚をどうするかを決めるのは、相手の出方を見てから決めても遅くありませんよ。
迷うのは子どもさんもいるので、仕方がない事です。
こちらは方向性が決まれば、動くことができますので、じっくり考えて決めて頂ければ大丈夫です。」
涙が出た。
離婚を決めてあの家を出たのに、今の私は離婚そのものを迷っている。
子どもの事もあるけれど、きっと私自身、一人で生きている事にまだ覚悟が足らないのだろう。
そして、夫からの手紙で、もしかしたら・・・という淡い期待が生まれているのかもしれない。
その希望が、まだ胸の中に残っているのだろう。
その期待を消せない自分。
情けなくて、悲しくて、申し訳なくて、
待合室で涙を拭いた。
静寂の時
しばらく、何も言わない時間が過ぎた。
静寂の時間。
思えばこれまで、後ろを振り返る事をしないで走り続けてきた。
静かな時間に包まれると、涙が出るので、その場所に自分を置こうとせず、必死にやってきた。
だからだろうか。
今、その静寂に包まれると、ふさいできたはずの傷がうずきだした。
優しい世界に行きたい。でも、どうしたら行けるのだろうか。私は、どこに行きたいのだろうか・・・
次回の約束
しばらくして、静寂の時を破る音がした。
足音が近づいてくる。
弁護士さんと立ち上がった。
調停員さんが呼びに来たのだ。
早足で、調停の部屋に戻る。
調停員さんから伝えられたことは、あまり前と変わらなかった。
「旦那さんは、やはりやり直したいと言っています。
あなたが望むことは全てすると。
子ども達とも一緒に過ごしたい、
あなたのご両親にも直接会って謝罪したいと言っています。
カウンセリングにも通って、すぐにカッとなる性格も直していきたいと言っていました。」
前と同じ返事だった。
これでは回数を重ねるだけで、いつまでも変わらない。
「あなたの気持ちは伝えておきました。
あなたへの扉はまだ閉まっているけれど、鍵は開いたと。
これからこの扉が開くかどうかは、旦那さんであるあなた次第だとも。
これからの行動に全てかかっていますよ、とも」
女性の調停員さんが付け加えた。
言葉を探していると、弁護士さんが口を開いた。
「相手側の謝罪の気持ちはわかりました。やり直したい旨も、手紙や今の発言から読み取れます。
ですが、それだけではこちらは信用することもできません。
具体的に、夫婦再生に向けてどう行動していくのか、書面での提示を希望します。」
隣で思わず頷いた。
私が求めていた事は、謝罪でもない。手紙でもない。
ちゃんとこの気持ちを理解した上で、再生ならそれに向けて行動してほしい、という事なのだ。
言葉ならいくらでもいえる。
ちゃんと、ちゃんと行動をしてほしいのだ。
「わかりました。相手方に次回までに出してもらうよう、伝えておきますね」
女性の調停員さんが引き受けてくれた。
それからは、次回の調停の日にちを決めた。
相手方に伝えると席を立とうとした調停員さんに、「もう一つだけ、夫に伝えてほしい事があります」
私は言葉をかけた。
続きは次回、また書きますね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。