夫への依頼
調停員さんに呼ばれ、私は弁護士さんと先ほどの部屋に戻った。
「お待たせしました。次回の調停日が決まりました。面会交流については、旦那さんと直接連絡して日程などを調整していただければ大丈夫です。」
若干早口で調停員さんが次回の日程を述べた。
私も弁護士さんもすばやく手帳にメモをする。
「旦那さんに先ほどの事は伝えました。
今後あまりプレゼントなどは送らないようにはします、と了承してくれました。
ただ、面会時のちょっとしたお菓子やガチャガチャなどのプレゼントに関しては、大目に見てほしいとお願いしていますが、それでよろしいでしょうか?」
早口で伝える女性調停員さんに、私は頷きながら答えた。
「わかりました。それなら大丈夫です。夫にそう、伝えてください。」
ほっとした。ちゃんとわかってもらえた。
安堵の表情とため息が漏れる。
そして、このまま閉廷となる前、隣にいた弁護士さんが口を開いた。
「一つお願いがあるのですが、相手方に今後どういった形で夫婦のきずなを取り戻すのか、きちんとした書面で相手方から提出していただけますか?
「やり直したい」「自分の行動を改善します」といっているだけですと、具体的に信用するかどうかできませんので。」
それを聞いて、私はハッとした。
そうなのだ。夫の主張は「やり直したい」「今までの事は謝る。ちゃんと直すから。」の繰り返しで、具体的にどうしていくかがはっきりと示されていない。
それがわからなければ、きっと戻ったとしても同じことを繰り返しかねない。
そうなれば、きっともう私はダメになってしまうだろう。
「わかりました。そう伝えますね。具体的に出して次回の調停までに書面で出してもらうようにしておきます」
そういわれて、今回の調停は閉廷した。
見上げた空の色
調停が終わり、弁護士さんにお礼を言って別れ、駅へと歩く。
寒い寒い空の下、見慣れた景色を歩いていく。
今回もあまり進まなかった。
私の思いも、調停も、霧の中にいるように進んでいる。
子ども達の笑顔と、私のこれまでの涙と、助けてくれる親や友人の言葉が、胸の中で交錯した。
頑張れるのかな。
私が願う「優しい世界」に、たどり着けるのだろうか。
思わずこみあげてきた感情が溢れないように、空を見上げて、思いを飛ばした。
大丈夫、きっとたどり着ける。
子ども達のためにも、私のためにも。
そう思いながら、子ども達の待つあの家へ帰る道を、足早に進んでいった。
優しい世界を願い続ける、子ども達のもとへ。