モラハラの記憶

2回目の離婚調停を終えて~あなたはあなたの幸せを~




変わらない平和

調停から戻ると、
いつもと変わらない
息子と娘の笑顔が出迎えてくれた。

 

両親の顔にも、
安堵の表情が見える。

 

私は調停の内容は話さずに、ただひたすらに、いつもと変わらない自分を振る舞った。

それでも夕飯を食べ終わると、安堵感からか、急激なだるさと眠気が体中を襲う。

何とかやることを片付けて子ども達を寝かしつけると、私もそのまま夢に落ちた。

平和な世界に、優しい世界に、これまでいなかったはずの「私」がそこにいることが、唯一無二の幸せなだと思いながら。




私の幸せ

朝、娘の泣き声で目を覚ました。

何とか寝かしつけてそのまま起きる。

珈琲を飲みながら朝の支度をしていると、ソファーに父親が座った。

それが合図となったのか、母親も前に座った。

私は一気に調停の内容を伝えた。

夫から届いた手紙、
夫の復縁の意思、

変わるという決意、

そしてこれからのことについて。

私が子どものためを思うと、離婚も迷っているという事も伝えた。

全部黙って聞いていた父が、話終わると口を開いた。

「とりあえず経過はよくわかった。でだな、お前はもしかしたら離婚しないかもしれないんだな?」

少しつまりながら、私は頷いた。

「息子と娘はパパが大好きなんだし、今のままでもいいかなって…」

「それはな、ずっとお前が、あちらの姓でいることなんだぞ」

父がまっすぐに私を見つめた。

「ずっとお前は、縛り続けられることになるんだぞ」

そして、言葉を続けた。

「お前だって、お前の幸せをさがしに行っていいんだぞ」

ふいを突かれたその言葉に、思わず涙が出そうになる。

別居してから一度も考えた事がなかった「私の幸せ」。

今を生きることに必死で、自分は最後に後回しになっていた。

それは私にはまだ遠い話だったから。

その幸せは、今の生活や子ども達の幸せの後に、初めて考えるタイミングだと思っていたから。

ただ私は、父と母にとっても、娘なのだ。

子どもの平和を願う、
私と同じ思いを子に持つ親なのだ。

その思いを受け取りながら、私は「ありがとう」としか答えることができなかった。

そしてまた、いつもの日常が回り始めた。

「私の幸せ」を願う両親のもとで、私もようやく「自分の幸せ」を思うようになっていた。